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『皮膚筋炎・多発性筋炎』について

【多発性筋炎・皮膚筋炎の疑いがある、多発性筋炎・皮膚筋炎ではないかと心配な方へ】

〇多発性筋炎・皮膚筋炎とは

多発性筋炎は、筋肉の炎症により力が入りにくくなり、筋肉を動かした時に痛みを感じる病気です。また筋肉の症状と同時に特徴的な皮膚の症状も現れるものを皮膚筋炎と呼びます(皮膚の症状に関しては後で詳しく説明します)。この皮膚症状の有無では筋病変の特徴に差が無いため、多発性筋炎・皮膚筋炎とひとまとめで扱われています。

男女比は13で女性に多い病気です。50代前後の年齢の方が多いとされていますが、どの年代にも発症する可能性があります。

膠原病や自己免疫疾患(自分の身体に対する抗体などを持ち、免疫のアンバランスがその病因と考えられる疾患)の一つに分類されています。

 

〇原因

免疫とは病原生物を退治して身を守るための防御システムです。膠原病ではこの免疫の働きが間違えて自分の身体を標的としてしまい、結果として様々な症状を起こします。多発性筋炎・皮膚筋炎では筋肉や皮膚に対する抗体が自分の体の中で作られてしまい、免疫が攻撃している状態です。なぜ自分の体の組織を標的にして攻撃するようになってしまうのか、原因はまだはっきりとは分かっていません。ウイルスや細菌などによる感染、免疫異常などがあるとも言われています。またいわゆる遺伝病ではありませんが、自己免疫異常の起こしやすさという体質は遺伝すると考えられています。

 

〇症状

皮膚筋炎は皮膚症状と筋症状の両方を生じる場合もあれば、どちらかの症状が強く、もう一つがあまり見られない場合もあります。筋肉の障害による症状(筋力低下)はほとんどの患者さんで見られ、他に関節痛、疲れやすい、食欲不振、体重減少、発熱などがあります。更に筋肉以外の症状(内臓などの障害)も認めることがあります。これらの症状は患者さん一人ひとりによって症状も障害される臓器も異なります。

 

筋症状

力が入らなくなり、疲れやすくなる症状がゆっくりと進行していきます。筋肉を動かした時に痛みを感じることもあります。特に身体(胴体)に近い筋肉に現れやすいなどがあげられます。

太ももの筋力低下により、階段を昇るのが困難、座った姿勢から立ち上がりにくいなどの症状がでます。

二の腕の筋力低下により、髪の手入れをしたり、洗濯物を干したりする時や高い所に物を上げる際に腕が上げづらいなどの症状が出ます。首の筋力低下により頭が枕から持ち上げにくくなります。

喉の筋力が低下して、食べ物が飲み込みにくくなったり、むせたり、またしゃべりにくくなったりします。ごくまれに心臓の筋肉も障害され、その場合は不整脈や心不全の症状を起こすことがあります。

皮膚症状

皮膚症状が出ますが、目立つのは顔の紅い皮疹です。紅い湿疹がまぶたにできてむくむ「ヘリオトロープ疹」手の指や肘・膝の関節外側などが赤くガサがサになる「ゴットロン徴候」、寒くなると手指や足指が白く冷たくなる「レイノー現象」、首から肩にかけて紅斑が出る「V徴候」や、肩から上背部にかけて紅斑がでる「ショール徴候」などが特徴的です。これらの皮疹はかゆみを伴うことが多く、初めはかゆみだけで始まる方もいます。

 

当院を受診される多くの理由

皮膚筋炎・多発性筋炎の疑いや心配のある方が当院を受診される理由で多いのは

・上記のような症状で当てはまるものが1つでもある。

・長引く発熱や関節痛、筋肉痛、力の入りにくさ、湿疹などができている。

・人間ドックや他の病院、皮膚科などで皮膚筋炎・多発性筋炎の疑いがあるといわれた

・親族に皮膚筋炎・多発性筋炎や他の膠原病、関節リウマチなどの人がいて心配

などです。

 

〇当院での診断

筋力テストを行い、筋力がどのくらい衰えているかを調べます。血液検査でも筋炎に特有の酵素の値が上昇しているか、自己抗体がみられるかを主に調べます。そして特徴的な皮膚症状が無いかも調べます。

また必要に応じて近隣の中核病院などと連携し、筋肉の障害の程度を筋電図、筋生検やMRIなどの検査を行うことがあります。

 

〇皮膚筋炎・多発性筋炎の合併症

合併しやすい病気のうち特に注意しなくてはならないのは間質性肺炎悪性腫瘍(癌など)です。間質性肺炎は普通の肺炎と異なり、細菌やウイルスなどが原因ではなく、自己免疫が自分の肺を攻撃する場合に起こります。特に喉の痛みや痰がないのに頑固に咳が出たり、運動時の息切れなどの症状となります。特に筋炎症状はあまりないのに皮膚症状強い皮膚筋炎に合併する場合は、急速に間質性肺炎が進行する場合があるので、できるだけ早く治療しなくてはなりません。悪性腫瘍(癌など)は、特に皮膚筋炎で合併しやすいものです。多発性筋炎・皮膚筋炎を発症し、治療してから見つかることもあるので、治療開始時とその後2年間は癌の有無をよく調べる必要があります。

 

 

多発性筋炎・皮膚筋炎と診断された方へ】

〇治療法

・筋症状

基本的な治療としてはステロイドを内服します。状態をみながら少しずつ量を減らしていきます。症状が進行していて重症化している時は、大量のステロイド剤を3日間点滴するパルス療法を行うこともあります。ステロイド剤ではあまり改善しなかったり、副作用などの理由で投与量を減らしたい場合は、免疫抑制剤を併用したり、免疫グロブリンの点滴を行う場合もあります。

筋肉への負荷を下げるため、治療初期は安静する必要がありますが、治療の経過を見ながらリハビリテーション目的の運動なども推奨していきます。

・皮膚症状

皮膚症状に対しては、ステロイドの塗薬を用いることが多いです。

 

この病気の進行に関してですが筋炎(筋肉症状)に対するステロイド療法の効果は8割ほどの患者さんで見られ、日常生活が可能となります。後遺症を残さず治り再発しない例が多いのですが、なかには筋力が完全に回復しない例や再発する例もみられます。

 

 

患者の皆様がうまく病気と付き合っていけるようにSRCのメディカルスタッフ一同がそれぞれの立場からお手伝いできればと考えています。病気に対する心配、生活に対する心配など何かお困りのことがございましたら受診の上ご相談ください。

 

多発性筋炎・皮膚筋炎は指定難病に認定されており、国の定める基準により医療費の助成を受けることができます。当院では重症度に応じて多発性筋炎・皮膚筋炎の難病受給を受けるのに必要な臨床調査個人票を記載・作成することができます

 

受診のご予約は電話でとることができます。多発性筋炎・皮膚筋炎の検査や診察、治療、相談などで受診を希望される場合にはお気軽にお電話ください。


執筆者兼監修者プロフィール

上原武晃

湘南リウマチ膠原病内科

院長 上原 武晃

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