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『ベーチェット病』について

[ベーチェット病の疑いがある、ベーチェット病ではないかと心配な方へ]

 

〇ベーチェット病とは

この病気は、口腔粘膜のアフタ性潰瘍外陰部潰瘍皮膚症状眼症状の症状を主症状とする全身性炎症性疾患です。性差はほとんどありませんが、男性の方が重症化しやすく、内臓病変を合併しやすいとされています。眼症状も男性に多い傾向があります。発病年齢は、男女ともに2040歳に多く30歳前半にピークを示します。

 

〇原因

この病気の原因は現在も不明ですが、何らかの内因(体の中の要因)と外因(外部の環境などの要因)の両者が関与して白血球の異常が生じて病気が起こると考えられています。内因については、遺伝的要因の「HLA-B51」というタイプが多いことが分かっています(ベーチェット患者の5060%で陽性)。ただ、健康な日本人全体の1015%でも陽性を示すこともあり、内因以外の要因、外因の関与も疑われます。外因としては、ある種の工業汚染物質、虫歯菌を含む細菌類やウィルスが考えられています。

 

〇症状

眼症状:この病気で最も重要な症状です。多くの場合、両眼に症状が出現し虹彩毛様体脈絡膜炎(ぶどう膜炎)が起こり瞳孔不整がみられます。

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍(口内炎):口腔粘膜、頬粘膜、舌、歯肉などに境界鮮明な有痛性円形の潰瘍(口内炎)が再発を繰り返す。

外陰部潰瘍:男性では、陰嚢、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、膣粘膜に有痛性の潰瘍がみられます。

皮膚症状:下腿や前腕に赤い皮疹(結節性紅斑)がよくみられます。また、にきびに似た皮疹(毛嚢炎様皮疹)が顔面、頚部、胸部などにでき、皮下の血栓性静脈炎、皮膚の被刺激性が亢進するので‘剃刀まけ’を起こしたりします。

関節炎:膝・足首・手首・肘・肩などの大関節が腫れたり、痛くなったりします。リウマチのように変形や硬直をおこすことは少なく、手の指などのような小関節は、あまり侵されることは少ないとされています。

血管病変:この病気で血管病変が見られたとき、血管型ベーチェットといいます。圧倒的に男性が多いといわれています。動脈静脈ともに侵されますが、静脈の閉塞が多く、部位では上大静脈、下大静脈、大腿静脈などに好発します。

消化器病変:腸管潰瘍をおこしたとき腸管型ベーチェットといいます。男性に多くみられます。腹痛、下痢、下血などの症状がおこります。

神経病変:神経症状が前面に出る病型を神経ベーチェットといいます。男性に多いのが特徴です。ベーチェット病発症から神経症状発現まで年数がかかり平均6.5年といわれています。

 

〇当院を受診される多くの理由

ベーチェット病の疑いや心配のある方が当院を受診される理由で多いのは

何日も続く発熱や微熱

口内炎が治らない、よく繰り返す

湿疹が治らない、いろんなところに出てくり返す

陰部(性器)に潰瘍ができた

関節痛が長引く

眼科でぶどう膜炎といわれた

 

などです。

 

〇当院での診断

ベーチェット病では、症状が多彩であり症状の出現パターンも個人差があります。当院でベーチェット病を疑った場合以下のような検査を行います。

血液検査 炎症反応(CRP、白血球数、補体価)、(HLA-B51に関しては大学病院など高次医療機関を紹介する場合があります。)

視診や触診、問診での症状の確認

 

これらによって診断された場合は、その他合併症の有無を確認し必要時にはそれぞれに応じた治療を開始します。また、診断基準に満たさない場合でも将来的に発症する可能性が疑わしいときは早期発見につなげるために、相談の上、定期的にフォローさせていただきます。

 

ベーチェット病を疑って検査を行い、その他の膠原病などの疾患がみつかることもありますので、気になる症状がある方は受診をお勧めいたします。

 

[ベーチェット病と診断された方へ]

 

〇治療法

現在、ベーチェット病を完治させる治療法は残念ながらありません。症状に対して、対処療法を行っていきます。

眼病変:基本的には、コルヒチンを内服します。ステロイド薬の点眼や眼周囲注射も発作期には有効です。その他、免疫抑制剤や副腎皮質ステロイドも有効といわれています。眼周囲注射など専門的な治療が必要な時には眼科医を紹介させて頂きます。

大切なことは眼発作を繰り返すことよる視力低下や将来的な失明などを予防することです。

最近は内服薬だけではなく、関節リウマチの治療などにも使われている生物学的製剤がベーチェット病の眼病変に対して有効性が高いことが確認され、これによる治療を行うこともできます。

皮膚や粘膜病変:ステロイドを使用します。症状が強いときにはコルヒチンを内服することがあります。

消化器や神経病変:ステロイドや免疫抑制薬を使用することがあります。

 

眼症状が認められない場合は、慢性的に繰り返し症状が出現するものの一般的に予後は良いといえます。眼症状のある場合は、網膜ぶどう膜炎の視力の予後は眼症状出現後2年で視力0.1以下になる確率は約40%といわれています。

ベーチェット病を、現在完治させることは残念ながらできませんが色々な症状をやわらげたり進行を抑えることできます。また、現在その他の膠原病で治療成績の良い新薬がいくつかあり今後ベーチェット病の治療にも応用されることが期待されています。

当院では、患者様がうまく病気と付き合っていけるようにメディカルスタッフ一同がそれぞれの立場からお手伝いできればと考えています。病気や生活に対する心配などがございましたら受診の上ご相談ください。

 

ベーチェット病は指定難病に認定されており、国の定める基準により医療費の助成を受けることができます。当院では、重症度に応じてベーチェット病の難病受給を受けるのに必要な臨床調査個人票を記載・作成することができます

 

ベーチェット病の検査や診察、治療、相談などで受診の希望される場合にはお気楽にお電話ください。


執筆者兼監修者プロフィール

上原武晃

湘南リウマチ膠原病内科

院長 上原 武晃

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