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リウマチ患者とワクチン接種の基礎知識:予防接種の重要性と注意点
リウマチ患者とワクチン接種の関係

はじめに:リウマチ患者とワクチン接種の関係

リウマチ患者は、自己免疫系の異常や合併症、治療薬の免疫抑制効果により、感染症のリスクが高まる傾向があります。そのため、予防接種(ワクチン接種)が重要とされています。しかし、リウマチ患者の場合、ワクチンによる副作用や適切な接種タイミングについても考慮が必要です。本記事では、リウマチ患者が知っておくべきワクチン接種の基本情報と、注意点について解説します。


リウマチとワクチン接種の重要性


リウマチ患者の感染リスク

リウマチ患者は、自己免疫の異常により、免疫力が低下しやすくなります。さらに、リウマチ治療で使用される免疫抑制剤(メトトレキサートや生物学的製剤など)は、感染症のリスクを高めるため、予防接種による感染予防が推奨されます。


予防接種の目的

予防接種は、特定の病原体に対する免疫を体内で作り出し、感染を予防することを目的としています。特にリウマチ患者の場合、感染症のリスクが高いため、インフルエンザやコロナウイルス、肺炎球菌などのワクチン接種は重要です。


リウマチ患者に推奨されるワクチン


インフルエンザワクチン

インフルエンザは、リウマチ患者にとって大きなリスクとなる感染症の一つです。毎年秋から冬にかけてのインフルエンザ流行期前に、予防接種を受けることで、感染を防ぎ、症状の悪化を防止できます。


肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌による肺炎もリウマチ患者には特に注意が必要な感染症です。肺炎球菌ワクチンは、一度接種することで5年以上の予防効果が期待できます。免疫抑制剤を使用している患者にとって重要な予防策です。


帯状疱疹ワクチン

リウマチ患者は、免疫機能が低下しているため帯状疱疹のリスクが高まります。帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の患者に推奨されており、リウマチ患者でも医師の指導のもとで接種が可能です。以前は抗リウマチ薬の飲んでいると使用できない生ワクチンのみでしたが、近年、薬を飲んでいても接種可能な不活化ワクチンも登場し、安心して接種できるようになっています。


リウマチ患者がワクチン接種を受ける際の注意点


生ワクチンと不活化ワクチンの違い

ワクチンには、生ワクチン(弱毒化された病原体を使用)と不活化ワクチン(病原体を殺して使用)の2種類があります。リウマチ患者は、免疫抑制治療を行っている場合、生ワクチンの接種が制限されることが多く、不活化ワクチンが推奨されます。


ワクチン接種のタイミング

リウマチ患者がワクチンを接種する場合、免疫抑制剤の影響を受けにくいタイミングを選ぶことが重要です。通常、ワクチン接種はリウマチ治療の前、または免疫抑制剤の服用を一時的に中断した後に行うことが推奨されます。


ワクチンの副作用と対応

ワクチン接種後に、副作用として発熱や倦怠感が現れる場合があります。これらは通常、数日で改善しますが、重篤な症状が出た場合は、すぐに医師に相談しましょう。リウマチ患者の場合、副作用が強く出ることもあるため、事前に医師に相談することが大切です。


免疫抑制剤使用中のワクチン接種におけるポイント


医師との連携

リウマチ治療に免疫抑制剤を使用している場合、ワクチンの選択や接種時期は、医師との連携が不可欠です。免疫抑制剤がワクチンの効果を低減させることがあるため、医師に相談の上、最適な接種計画を立てることが重要です。


自己判断での接種は避ける

リウマチ患者が自己判断でワクチンを接種すると、免疫機能への影響が出る可能性があるため、必ず医師と相談した上で接種を行いましょう。特に免疫抑制治療中の方は、接種が適切かどうかを慎重に確認する必要があります。


ワクチン接種以外で感染予防のためにできること


手洗いや消毒の徹底

感染予防の基本として、こまめな手洗いやアルコール消毒が有効です。リウマチ患者は、特に感染症にかかりやすいため、日常的な感染予防対策が重要です。


適切な栄養管理

栄養バランスの取れた食事は、免疫機能をサポートし、感染予防に役立ちます。特にビタミンCやビタミンD、亜鉛など、免疫機能に必要な栄養素を積極的に摂取しましょう。何らかの理由で栄養が十分に取れない場合には、保険診療外になりますが、ビタミン注射(にんにく注射)やビタミン点滴(マイヤーズ点滴)なども有効です。


定期的な運動

適度な運動は免疫機能の維持に有効です。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を日常に取り入れることで、体の抵抗力を高め、感染予防につなげましょう。


リウマチ患者とワクチン接種に関するよくある質問


ワクチン接種は必ず受けるべきですか?

リウマチ患者は免疫機能が低下しているため、ワクチン接種は感染予防のために推奨されていますが、必ずしも全員が受ける必要はありません。医師と相談し、自分に合った予防接種計画を立てることが重要です。


ワクチンの副作用が心配ですが大丈夫ですか?

一般的にワクチン接種後の副作用は軽度であり、数日で改善することがほとんどです。しかし、リウマチ患者は副作用が強く出ることもあるため、医師に事前に相談し、適切な対応を取りましょう。


生物学的製剤を使用している場合、どのワクチンが適していますか?

生物学的製剤を使用している場合は、生ワクチンの接種が制限されることが多いため、不活化ワクチンが一般的に推奨されます。医師に相談し、適切なワクチンを選びましょう。


まとめ

リウマチ患者にとって、ワクチン接種は重要な感染予防手段の一つです。インフルエンザやコロナウイルス、肺炎球菌などのワクチン接種を受けることで、感染リスクを低減し、症状の悪化を防ぐことができます。ワクチン接種の際は、免疫抑制剤との相互作用に注意し、医師と連携しながら適切な計画を立てることが重要です。ワクチン接種以外にも、日常生活での予防対策を徹底し、健康管理を心がけましょう。

執筆者兼監修者プロフィール

上原武晃

湘南リウマチ膠原病内科

院長 上原 武晃

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